2025年初頭、トランプ大統領が「カナダをアメリカの51番目の州にする」という発言を行い、北米政治に大きな波紋を広げています。
これを受けて、アメリカの市場予測サイト「polymarket」 では、アメリカのカナダ併合をめぐる予測が立てられています。
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出典:Polymarket — PolymarketにおけるCanada 51市場のオッズ推移
グラフを見ると、2024年3月現在、カナダを51番目の州として併合する予測のオッズはおおよそ2%〜4%ほどで推移していることがわかります。
この記事では、ドナルド・トランプ大統領のカナダ併合の発言の背景や両国の反応、歴史的文脈、そして実現可能性について詳しく解説します。
- PolymarketではCanada 51(カナダを51番目の州として併合する可能性)のオッズは約2~4%と低水準
- 発言前後で一時的なスパイクが確認されてはいるが、政策実現への期待値は依然低い
- 経済的・外交的影響が大きく、両国の関係悪化が懸念される
発言の経緯と真相は?
- 2024年11月、マーララゴでの夕食会でトランプ氏が冗談交じりに発言
- SNSで「トルドー州知事」と揶揄され、話題が拡大
- 2025年1月の記者会見で「軍事力なしの経済圧力による併合」に言及
トランプ大統領がカナダ併合をほのめかした発言は、2024年11月下旬にフロリダ州で開催された会合が発端とされています。
当時、感謝祭の週末にマーララゴで行われた夕食会で、カナダのトルドー首相が米国の対カナダ関税に対する懸念を示す中、トランプ氏は冗談交じりに「ではカナダが51番目の州になればいい」と返答し、大きな話題となりました。。
その後、SNS上でも「トルドー州知事」と呼ぶなど、発言はエスカレートしていきます。
2025年1月の記者会見では、軍事力を使わず経済的圧力でカナダを取り込む構想を明言するまでに至りました。
こうした背景には米国の対カナダ貿易赤字への不満があります。併合によってこの問題を解決しようという意図が示唆される一方で、トランプ氏特有の誇張表現と交渉術の側面も見受けられます。
予測市場の反応と併合の実現可能性
- Polymarketのオッズは2~4%と低く、市場は併合の実現可能性を否定的に見ている
- 米国・カナダの憲法上のハードルが極めて高く、政治的な実現は困難
- 併合よりも関税や経済的圧力を通じた影響力強化が現実的
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出典:Polymarket — PolymarketにおけるCanada 51市場のオッズ推移
興味深いのは、今回の発言を受けてのオンライン予測市場、Polymarketでの動向です。
Polymarketのオラクル記事によると、カナダ併合に関する市場は、グリーンランドやパナマ運河の併合と比較して低いオッズ(約2~4%)で取引されています。
マーケットの参加者は、カナダが州として加盟するためには、まずカナダ政府内での一致した意見と、全10州および連邦議会の全面的な支持が必要であること、さらにトランプ政権側も米上院で2/3以上の賛成票、下院での多数派など、憲法上のハードルが極めて高いと判断しているようです。
カナダ側:全10州と連邦議会の全面的支持
アメリカ側:上院で2/3以上の賛成、下院多数派の支持
また、Polymarketの記事では、トランプ氏が実際に軍事力を行使する可能性よりも、経済的圧力や関税措置による「併合の示唆」が現実味を帯びていると指摘されています。
たとえば、通商摩擦の一環として、米国がカナダ産原油・天然ガスに対する追加関税を示唆したことが、既に市場に影響を与え、交渉の裏で実際の政策変更が行われる可能性があると分析されています。
つまり、たとえ完全な併合が実現しなくとも、米加間の経済的緊張は今後も続くと見られているのです。
米国とカナダ、両国のメディアはどう報じた?
- 米国メディアは冗談か政治的駆け引きかを議論し、実現可能性の低さを強調
- カナダ側では強い反発が起こり、国家主権を脅かす発言として非難
- カナダ国旗の売上増加や愛国心の高まりなど、国内の結束が強化される傾向
米国メディアは、トランプ大統領の発言を衝撃的かつ挑発的な発言として取り上げ、実現可能性の低さや、合衆国憲法上の手続きの困難さを指摘しています。
AP通信やFOXニュース、TIME誌などは、発言内容の詳細と共に、冗談として片付けるべきか、もしくは政治的駆け引きなのかといった議論を展開しました。
共和党内部からはジョークとして受け流す声も見られた一方、保守派の一部やMAGA支持者の中には「米国が北米全体でリーダーシップを取るべきだ」という主張もあり、意見は分かれています。
一方、カナダ側では、政府高官から市民に至るまで、強い反発が起こりました。
トルドー首相は「カナダがアメリカの一部になる可能性は絶対にあり得ない」と断固として否定しています。
また、カナダの主要メディアは、発言を国家主権に対する侮辱として報じ、カナダ国旗の売上増加や愛国心の高まりといった反応を取り上げるなど、国民感情の高まりを背景に強い非難の声が上がっています。
カナダの政治家や知識人は、トランプ氏の発言を単なる挑発や交渉カードとして片付けるにはあまりにも危険な内容であり、今後のアメリカとカナダの関係に深刻な影響を及ぼす可能性があると警鐘を鳴らしています。
こうしたアメリカとカナダの緊張関係は、最近に始まったものではありません。
18世紀末から19世紀初頭にかけてのアメリカ独立戦争期や1812年戦争、さらには南北戦争後の混乱期にまで遡ることができます。
当時、アメリカは「マニフェスト・デスティニー」という理念のもと、北米全土への拡張を夢見ており、カナダ併合の試みが何度か行われた歴史も存在します。
しかし、いずれの試みも成功せず、1867年のカナダ連邦成立を経て、カナダは独自の国家としての道を歩むこととなりました。
さらに、20世紀以降、アメリカはハワイやアラスカの併合以降、他国の併合は国際秩序上の禁忌とされ、正式な領土拡大の枠組みは極めて限定的なものとなっています。
まとめ: 北米の未来を左右する政治的課題の結末はいかに
- 現時点でカナダ併合の実現可能性は極めて低い
- 経済的・外交的対立が深まり、今後の両国関係の変化に注目が集まる
- 建設的な対話と関係修復が求められる重要な局面
現時点でカナダ併合の実現可能性は極めて低いものの、トランプ大統領の発言が米国内外に与える影響は小さくありません。
米国内では国内支持層の士気を高め、強硬外交のアピールとして機能する一方、カナダ側は国家主権と社会制度の維持を最優先課題としています。
今後、カナダは米国からの圧力に対して断固たる態度を維持しつつ、経済的・外交的対抗策を模索していくでしょう。一方、米国内でも選挙戦略と実際の政策の境界線について議論が続くことは必至です。
トランプ大統領の「カナダ51番目の州」発言は、単なる挑発を超え、米国の内外政策の転換点を示唆するものかもしれません。
貿易赤字や国際秩序への不満が背景にある一方、国家主権や歴史的経験が強い反発を引き起こしている現実を浮き彫りにしています。
両国が建設的な対話を通じて関係修復の道を模索することが求められる局面といえるでしょう。